エスパルス研究所

清水エスパルスの躍進と新スタジアム建設に向けた考察

2026年03月

99

 清水エスパルスの試合を現地観戦しに行って、「楽しい」と思うことは年に一回あるかどうかだが、この広島戦は本当に楽しかった。少なくとも、後半途中までは。

 まあ、冷静に考えれば、広島が過密日程で疲弊していた要因が大きかったのだとは思う。清水も連戦だったとはいえ、明らかに清水の方がフレッシュだった。

 ただ、それにしても、前半の清水は機能した。チームが機能している分、北川の切れ味、宇野のボール奪取力、ブエノの球さばき、ジェラの強さといった個々のストロングが発揮され、観ている側も「それ行け」とポジティブな気持ちで応援できた。

 何となく押し気味でも、前半は無得点ということが続いてきたが、ついにその殻も破ることができた。しかも、先制点を決めたのはMr.こぼれ球ふかし男こと吉田豊であり、人気者が決めたことで、普段の1得点以上にチームを勢い付かせた。直後に続いたセフンの追加点は、スタジアムの空気で日本代表GKが浮足立って、誘発したと言えるだろう。後半頭から敵が2人交代し、攻撃の圧力を強めるも、3点目までとれたというのは、望外だった。しかも、北川のゴールは、左からのクロスに対しニアで1人潰れ(確かもう1人中央にもいたような)、大外で待っていた北川が狙いすまして決めたもので、再現性の高いゴールだろう。

 と、ここまではよかったのだが、リードした後の試合運びという、このところの課題が、またしても露呈してしまった。セフンにロングボールを当てる戦術をとっていることは理解できるが、試合展開にかからず、またセフンが交代で退いても、同じようなロングボールばかりであり、後半の途中からは実質的にボールを捨て続けていた。あれではずっと敵のターンが続き、決壊するのは時間の問題である。今日は3点あったので、よもや追い付かれることはあるまいと思いながら観ていたが、これが1点差、2点差だったら、もっとバタバタしていただろう。無理に攻めなくてもいいので、ボールを保持して落ち着ける時間帯を作ってもいいはずだ。

 吉田監督の選手交代が遅いのが気になっていたが、今回の広島戦では松崎、北川、カピが動けなくなり、強いられた形での選手交代が続き、結果的に選手交代は早まった。しかし、前節では選手交代しようと思っているうちに失点、今節では選手交代の直後に失点と、相変わらず選手交代のタイミングがちぐはぐだった。あと、試合終盤には敵コーナーフラッグ付近で鹿島ろうとする場面もあったが、ほとんど時間を稼げておらず、あれだったら普通に攻めた方がマシではないかと思われた。

 全体としては、非常に楽しく、大満足の試合だったことは間違いない。VARも広島に味方することはなく、色んな意味で上手く行った試合だった。ただ、もうちょっと賢く時間を使えるチームになってほしい。


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 明らかにクラブとして坂道を転げ落ちている状態で、実際に今季まったく結果が出ていないのが、福岡である。アウェーの連戦とはいえ、勝ち点3が絶対に求められる試合だった。その相手に、得点や勝ち点を与えてしまったのは、痛恨と言う他ない。

 今回の福岡戦、前節で負傷交代したパクスンウク以外は、同じスタメン。試合を重ねながらチーム作りを進めている変則シーズンなので、今回のようなミッドウィークの試合なら、本来はもっと大胆にターンオーバーしてもよさそうなものである。吉田監督は、選手たちをフラットに見て、その時点で戦える選手を選ぶ指揮官と言われる。なのに、現状あまりメンバーをいじっていないということは、かなりレギュラーが固まってきているということか。はたまた、怪我人が多かったり、控えクラスの力がガクッと落ちたりして、選択の余地がないということか。

 前回の岡山戦は、選手交代の結果としてパワーが落ちた感じがあったから、監督としても、ターンオーバーや、早目の選手交代を躊躇することになったのだろうか。しかし、今回の福岡戦では、選手交代の遅れが、勝ち点を落とすことに繋がってしまうのだから、皮肉なものである。清水が3枚替えしようとしていた時に、プレーが続けられた時には、嫌な予感がしたものだったが、やはりそれがアダになってしまった。

 吉田監督が、逃げ切りのための5バックをよく使う人なのかどうかは分からないが、この福岡戦で失点前にその交代ができていて、結果的にも無失点で勝ち切ることができたら、大きな成功体験となり、戦い方の幅も広がったと思うのに、残念である。

 まあ、PK戦になだれ込んでも、「負ける予感しかしない」という感じではなくなり、その点だけはポジティブと言えようか。とにかく、もうそろそろ2:0とか3:0といったはっきりした勝利を見せてほしいものである。


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 この岡山戦が始まる前までの清水の戦績は、普通のレギュレーションなら、1勝・3分・1敗で、まあまあ安定はしていた。普通であれば、開幕戦で敗れて以降は、「4試合負け無し」となるはずだった。今季、大敗した試合などは一つも無い。それでも、清水の意気が全く上がらなかったのは、言うまでもなく、PK戦の3連敗が重くのしかかっていたからだ。

 それが、ようやく今回の岡山戦で、PK戦連敗の暗いトンネルを脱し、PK戦勝利となった。PK戦であっても、それなりに「勝利」の気分を味わえるのだなと、実感した。

 しかし、本来であれば、90分で勝ち切って勝ち点3を得なければならない試合だったことは、言うまでもない。守備の固い岡山相手に、前半から押し込み、決めなければいけない場面が何度かあった。前半のうちに、それを普通に決めていれば、多少終盤に反撃を受けても、勝ち切れるはずの試合だった。

 周知のとおり、吉田清水のチーム作りは守備から入り、攻撃の構築は後回しで、最近になりようやく具体的な形を落とし込んでいるということである。この岡山戦における攻撃の活性化は、間違いなくその成果が出たものだろう。

 ゴール前で合わせるだけというビッグチャンスを、セフンが2回続けて外した時には、ああいうのを合わせてゴールに流し込むのは髙橋利樹が大得意なだけに、利樹出せやと多くの人が思っただろう。そういう意味で言えば、セフンが重要な先制点を決めたことで、戦犯にならなくて良かった。

 もう一つ良かったのは、梅田がヒーローになったことだ。この試合、90分の戦いを見ていて、やはり梅田はシュートコースの読み、飛んでからの一伸び、間合いの詰め方など、優れた点が多いと感じた。「ただ、その長所は試合の流れの中でこそ発揮できるもので、止まった状態からのPK戦ではどうなのか…」と心配しながら見ていたのだが、見事に2本も止めてくれた。キッカーは全員成功だったし、これで清水に漂っていたPK戦のトラウマもほぼ払拭できたと言っていいだろう。そして、正守護神争いも、明暗が分かれてきた。

 あとは、この試合の前半のように決めるべき場面を作った時に決め切ること、そして90分を通じた試合運びで内容を勝ち点に結び付けることだろう。

 他方、この岡山戦、先方が神谷、江坂、ルカオといったキーマンが退き、「しめしめ、これで岡山は攻め手がないな」と思ったのだが、実際には岡山は選手交代後に攻勢を強めており、うちとは違って木山監督の下での戦い方が浸透しているのだろうと感じた。対する清水は、選手交代後にパワーが落ちており、まだ属人的要素で戦っているということなのかもしれない。


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 以前、当S研ブログでは、「今季の正GKとして、セーブ能力で上回っていると思われる梅田ではなく、沖が起用されているのは、ロングキックの精度の違いによるものかもしれない」というような仮説を述べた。

 今回のセレッソ戦で、その素人仮説は案外当たっていたかもしれないと感じた。沖が先発した前節までは、ゴールキックやGKからのフィードは、ほとんどロングキックで、低い位置から繋ぐことはあまりなかった。それに対し、今回のセレッソ戦では、GKからの短いフィードでビルドアップを始めるケースが多かったからである。

 つい、ひと昔前までは、現代のGKはビルドアップの能力が重要という言説が主流だったように思う。仮に、清水の2人のGKを、梅田がビルドアップ型、沖がロングキック型と分類すれば、前者の方がモダンで優れたGKだというのが、近年の一般的な言説だったはずである。ところが、吉田監督をはじめ、ロングキックでポストに当ててそこからサッカーを始めるというやり方が最近またトレンドになってきていることから、とりあえず今季序盤の正守護神争いでは沖が一歩リードしていたというところではないか。

 ただ、吉田清水の今の完成度では、しっかりと握って前進し相手ゴールに迫るという方法論は確立されていない。ゆえに、今のチームではロングボール戦法の方が機能し、今回のセレッソ戦のようにGKからのロングボールの距離や精度が落ちると、劣勢の試合展開になるということなのかなと、解釈している。

 セレッソ戦で、梅田のビッグセーブが何度も見られたわけではなく、止めて当たり前の正面のシュートが多かった。それでも、90分間で梅田が安定感を見せてくれたことは、この試合の収穫だろう。ただ、その神通力も90分までで、PK戦では違いを見せられなかった。これまで3度のPK戦で、清水はGKもキッカーたちも弱さばかりをさらけ出す形となってしまい、その流れはGK交代をもってしても変えられなかった。PK戦を見ていて、「勝つ気がしない」というのが正直なところである。

 セレッソには昨シーズン2試合ともけちょんけちょんにされたので、クリーンシートで終え最低限の勝ち点をとれたことに安堵はしつつも、ルーカス・フェルナンデスらの役者が揃っていたら切り裂かれていただろうということは感じる。吉田監督の哲学からすれば、前節のような打ち合いよりも、スコアレスドローの方が、チーム成熟に至る正しい道筋なのであろう。まあただ、PK戦でも何でもいいから、もっと勝利が見たいのが本音だ。


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 世界的には、PK戦では、エンドは基本的に主審が(しばしばあらかじめ)決めることが多いらしい。試合前のようにコイントスでエンドを決めることが少ないのは、海外サッカーに特有の治安の問題や、ピッチの荒れ具合を考慮して決めざるを得ないからだという。その点、今Jリーグの特別大会でやっているPK戦の方式はやや特殊で、コイントスを2度行い、1度目でエンドを決めて、2度目で蹴る順番を決めているようである。少なくとも、我々が体験した京都戦とガンバ戦ではそうだった。そして、2度とも、清水側のエンドとなり、なおかつ有利(勝率55~60%程度と言われる)な先攻を確保できた。つまりPK戦のコイントスで清水は4連勝したことになる。しかし、結果は2連敗。

 前回の京都戦では、ブエノがコイントスに勝ちながら、「おい、どっちにするんだよ?」という感じでベンチに慌てて確かめる様子があり、それを含めて、明らかにPK戦への準備ができておらず、あれでは負けるのは必然だと感じた。それに比べると、その後練習をかなりしたらしく、今回のガンバ戦PK戦はまあまあ集中してやれていただけに、PK戦勝利が欲しかった。

 GK沖は、このガンバ戦で、「触れはしたけれど弾けなかった」というミスを3回犯した。前半の2失点と、PK戦で最後に決められたキックである。いずれもJ1の一流のGKなら対処できただろう。PK戦の時も、相手のリズムを乱そうと駆け引きはしているが、幸か不幸かマスクが甘く、GKに必要な威圧感や不気味さというものがない。今のままの沖が守護神だと、清水がJ1で躍進するというのは、難しいかもしれない。前半の2失点目は特に、DFが一応は寄せてシュートコースを限定していた中で決められたものであり、あれは厳しいなと感じた。

 セーブに関しては、梅田に一日の長があることが、昨シーズンの後半に証明された。それでも今期、沖が正守護神に返り咲いたのは、ロングキックを主体とした戦いにシフトし、沖の方がロングキックが安定しているという評価ゆえだろうか? 今季ここまでのところ、沖のパフォーマンスは満足とは行かないので、このあたりで梅田も見てみたい。

 試合全体に関しては、誰もが感じたように、前半に清水側がある程度押し込みながら、GKも含めたDFのキワの差で、ガンバが少ないチャンスを生かし優位に立った。解説のケンタ氏が指摘していたように、清水はボランチ脇がぽっかり空き、そこを使われてピンチを招くという構造的な問題は確かに気になったが、それよりもあの程度のピンチであっさり2失点してしまうGK含めた最終ラインの強度の低さは問題だろう。怪我人多発による厳しさもあるとはいえ、早く吉田スタンダードの徹底をお願いしたいものである。

 一方、後半にまさかの2得点で追いついたわけだけど、あの時間帯もあまり良い攻撃ができていたとは、個人的に感じなかった。吉田監督も試合後、「後半、選手交代をしたが、少しバランスが崩れてしまった」とコメントしている。ただ、2度ともサイドの揺さぶりからカピがぽっかりと空き、それをともに得点に結び付けたということは、戦術的な狙いが的中した形だっただろうか。まあ、カピの口振りからすると、1点目もクロスではなくシュートだっただろう。

 それにしても、吉田清水のシステムは明らかに4-2-3-1で、千葉カンはどう見てもトップ下としてプレーしていると思うのだが、いつまでみんな、4-3-3(千葉カンはインサイドハーフ)と呼び続けるのだろうか? 今回の試合で解説のケンタは、千葉はトップ下と言っていたが。

 あ、ちなみに、PK戦で先攻が有利なのは統計的に確認された事実だけど、選択したエンドがどう影響するかについては、確たることは言えないらしい。自分たちの応援団側のエンドでやっても、逆にプレッシャーになって、失敗しやすくなるという現象もある由。


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