エスパルス研究所

清水エスパルスの躍進と新スタジアム建設に向けた考察

2024年11月

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 実に奇妙な試合だった。「豪華メンバーによるど根性サッカー」VS「格安メンバーによるインテリジェンスサッカー」と言おうか。

 まあ、もちろん、今回の熊本戦では、清水が若手主体に切り替えたので、実際にピッチに立った選手は全員が高給取りだったわけではないが、そういうターンオーバーが可能なことを含め、清水の方が選手層が厚く膨大な人件費をかけていることは否定できない。

 ちなみに、確認しておけば、熊本は最終的にJ2の12位のチームであり、一時は降格危機にもあった。そのチーム相手に、サッカーの組織面で完敗し、前半などはほぼ相手のサンドバッグにされた。観ていて誰もが感じたように、もし熊本に「決める人」がいたら、清水は何失点していたか分からない。

 彼我の格差は、何から生まれるのか。指揮官の差。それに尽きるだろう。普通、あるJクラブが成績で躍進すると(特に地方クラブとかが)、そこの監督は引き抜きにあったりするが、J2優勝を遂げた秋葉監督がJ界隈で争奪戦になっているという話は聞いたことが無い。今季の清水の成績が、監督の戦術の賜物ではないことは、周知の事実だからだ。

 誤解してほしくないが、所長も秋葉さんは人間として大好きであり、一生清水にいてほしいと願っているくらいである。ただし、監督以外のポジションで。試合前の声出し係とか(?)。別の言い方をすれば、秋葉さんは少なくとも清水には合っていない。あの人は、それこそ水戸のような、低予算の若手主体のクラブで、選手をハードワークさせることで最大値を引き出すようなタイプなのだと思う。そういう役割だったら、最強だろう。残念ながら、実績のある選手や高給取りとはミスマッチだ。

 明らかに、反町GMは、秋葉さんの監督としての能力を疑問視している。J2優勝したのに、評価は歯切れの悪いものであり、来季の続投も明言していない。

 J2優勝させた監督が解任されたなどという例は恐らくJの歴史になく、秋葉監督は続投とならざるを得ないだろう。それは来季のJ1に向け、丸腰で戦場に出向くくらいの危うさである。来季に向けて、清水は大きなジレンマをしょい込んだ。


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 何はともあれ、ファミリーの皆様、おめでとうございます。

 それにしても、優勝がかかった一戦というのに、「ターンオーバーか?」と思うようなスタメン。北川不在は織り込み済みだし、権田と高橋の欠場はたぶんトレーニング中の脳震盪からの回復期間が続いていると思われ納得だが、それ以外もずいぶん斬新な顔触れとなった。

 基本は3バックだったと思うが、ビルドアップの時は原を前に出して4バックっぽくなり、相手のロングキックの時には原と西澤が入れ替わって原が競る形をとり、ディフェンシブサードでは西澤がディフェンスラインまで降りて5バックと、結構ややこしい可変をしていた。

 しかし、そういう工夫も虚しく、ボールが全然前に運べない。GKからのロングボールが多かった栃木戦と違って、今回はディフェンスラインからのビルドアップが基本だったが、いわきの圧力が結構強く、DFの苦し紛れの繋ぎが相手に渡って破局的な大ピンチになったことが、前半3回くらいあった。結局、シーズンを通して、ビルドアップの形は構築できないままだった。普段は乾先生や山原、カル、ブラガらの突破で誤魔化しているが、彼らが不在だと、機能不全が如実に出る。

 とはいえ、この試合に関しては、希望の光は、セットプレーである。今季再三申し上げてきたとおり、山原のキックは面白く直接FKには向いていると思うが、たぶんボールの高低を操るのが得意でなく、コーナーキック向きではないと思う。実際、キッカーが矢島や西澤に代わると、コーナーキックの期待度が増すことを、今季何度も見てきた。その矢島と西澤が両方先発でいるのだから、チームとしてのオーガナイズがイマイチでも、ある程度力任せで押し込んでセットプレーをとれば、得点の可能性はあるのではないかと思っていた。実際、攻撃はまったく機能していない中で、セットプレーでどうにか1点をもぎとった。

 去年と違って、娯楽的に大量得点する試合はなくなり、総得点の数字も、得失点差の数字も、チャンピオンらしからぬ平凡なものである。それでも1位になれたということは、秋葉監督がこだわった勝負強さが実ったということだろう。今日の前半を見せられて、来季に向けバラ色の希望を抱くというのは無理な話だが(笑)、今日ばかりはファミリーとともに欲しかった「結果」を手にしたことを喜びたい。


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