最近、強く思うのは、権田修一は絶対に政治家にはならない方がいいだろうな、ということである。
向いていない、という意味ではない。向きすぎているのである。あんなに人の心を動かせる演説ができる人は、そういない。ああいう弁舌巧みな人が政治の世界に入ったら、ヒトラーのような恐ろしい独裁者になりかねない(笑)。だから、サッカーチームにいるくらいの方が、無害でいいのである。サッカーだったら、どれだけ演説でサポの感情を揺り動かしても、戦争は起きないからね。我々の貢ぐカネが増えるくらいで。
恥ずかしい話だが、個人的に、今季終盤戦、試合前のロッカールームの様子がツイッターで流れてきて、そこでキャプテン権田が円陣で披露する声出しに、何度か涙してしまった。そして、最終戦後のセレモニーでの、権田の演説。あれはヤバかった。だいたいああいう席でアスリートが述べることなんて、通り一遍の内容になるものである。それが、チームの方向性や、我々サポの姿勢まで考えさせられるようなことを、感動的に綴ってみせるのだから、恐れ入る。試合が終了して残留が確定しても泣かなかったが、権田の挨拶には涙を禁じえなかった。
今季の清水は、権田、竹内、鈴木義宜と、キャプテン3人制で臨んだ。最初は、今までの流れで、何となく3人の中で竹内が「第一キャプテン」みたいな感じだった。しかし、竹内が出ない試合が増え、鈴木義宜も長期離脱する中で、フル出場を続ける権田がいつしか「キャプテンの中のキャプテン」という位置付けになった。考えてみれば、最終節のキャプテン挨拶も、別に竹内がやってもよかったわけだが、権田がやることに、誰も違和感はなかっただろう。
強く印象に残っているのは、10月2日にアウェー福岡戦で勝利した後、権田がこんな風にコメントしていたことである。「今日のようなアグレッシブな守備だったり、切り替えの早さを失ってしまえば、積み上げが何も無いということになってしまう。ボールをつなぎたいというところもあるが、それだけでは勝てないし、まずは今日のような戦いをベースにしていきたい。」
福岡戦後に、権田が述べていたことは、実質的にロティーナのやり方に疑問を呈するようなものだったと思う。しかし、権田が提唱するような泥臭い方向に、チームは舵が切れなかった。結局、福岡戦がロティーナ清水の最後の勝利となり、その後は3連敗。対照的に、平岡監督の下で「アグレッシブな守備だったり、切り替えの早さ」を前面に出すことで、チームは蘇生した。こうして、2021年の清水は、終盤になって、名実ともに権田のチームになったと言って過言でないだろう。
ただ、その権田については、リーグ戦終了と同時に、FC東京がリストアップしていて権田本人も前向きとか、神戸が興味とか、非常に気になる情報が飛び交い始めた。清水も「契約延長を打診中」などと言われるが、「契約延長」ということは買い取りではなくレンタル期間を延長するという意味か? 対するFC東京はポルティモネンセに移籍金を払う用意があるのか? 詳しいことは分からないが、ミクシィとのマネーゲームになったら、分は悪そうである。
キャプテンの腕章を巻いて、これだけチームの核となり、最終節の挨拶であれだけサポーターの心を揺さぶった男が、古巣から多少良いオファーが来たからといって、それに飛びついてしまうものだのだろうか? 清水での影響力が大きくなり過ぎただけに、失った時の喪失は大きそうだが…。
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