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 非常に賢く戦った90分間だったと思う。浦和相手に前から行けば行くほど、ポジションのズレを作られて、危険なシーンを作られてしまう。ならばプレスは限定的にして、ブロックを作って構え、スコアレスをベースとした試合に持ち込もう。ただ、チャンスがあれば(そして他会場の経過を見ながら)、長短のカウンターで得点の機会をうかがい、勝ち点3も狙ってみよう。恐らく、平岡監督の狙いはそんなところにあったと思われる。言い換えれば、勝ち点ゼロに終わり、降格圏で最終節を迎えることだけは避けるというのが至上命題だったということだろう。

 もちろん、いくらブロックを作っても、やられる時はやられるし、特にロティーナ政権下では、上手く守っているようでいながら、結局はあっけなく敵にゴールを割られ、1試合で1失点は必ずするチームだった。ロティーナが去り、ようやくこういう耐え忍ぶゲーム展開で、実際に無失点で乗り切ることができたのだから、不思議なものである。

 浦和側が、ユンカーが不在で、興梠が先発を外れるなど、FWらしいFWを欠いたことが、我が軍有利に働いたことは否定できない。それでも、浦和にほぼ一方的に握られながら、相手の明白な決定機は一度あったかどうかであり、それだけ気持ち、集中力がモノを言った試合だった。

 ロティーナの時には、「スペースと格闘している」感があり、肝心のボールや敵の動きに対応できないことが多かったのに対し、平岡監督が戦う姿勢を注入して、現状はロティーナのエッセンスを引き継ぎつつ、良いバランスになっているのだろう。

 中村慶太の決勝ゴールは、こんな風に高い集中力でゼロに抑えれば、時にはこういうご褒美もあるのだという、サッカーの奥深さというか神秘のようなものを垣間見た思いがした。内容的にはスコアレスドローが妥当だったかもしれないが、最高の結末が待っていた。試合終盤に必ず押し込まれる清水の体質を考えると、試合終了間際の得点で、相手に反撃の時間を与えなかったことも、幸運だった。

 それにしても、下表のスタッツを見ると、「動き」が非常に少なかった試合だったことが分かる。お互いにオフサイドが一度もないなんて試合、あまり無いのではないか。VAR介入もゼロだったし。

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