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 今回の柏戦の前半、清水はいつになく、ビルドアップが比較的上手く行き、ミドルサードくらいまでは簡単にボールが運べるので、見ていてそれほどストレスを感じなかった。結局、清水の前半のボール支配率は56%だったようである。これまでの試合で、清水は支配率が50%を超えて勝った試合が一つもないわけだが、「もしかしたら、その壁を、初めて超えられるか? 支配しながら勝つというロティーナサッカーの完成形を、初めて拝めるのか?」などと思いながら観ていた。

 しかし、そういう試合展開は、古狸ネルシーニョの思う壺だったのだろう。そもそも、清水はGKに2CBに2ボランチと、5人でビルドアップしており、対する柏はFWの2人がにらみを利かせる程度だったので、いかに清水と言えども、ミドルサードまでボールを運べるのは、当たり前である。

 なので、柏側としては、ある程度相手を引き込みながら、ボールを奪って、そこからクリスティアーノの機動力を中心に一気に攻め切って得点を奪うというのが、この試合の戦略だったのではないか。清水の側は、いつもと違ってある程度ボールが持て、何度かシュートまで行けたので、勘違いして、まんまと敵の策にはまったのかもしれない。

 もちろん、清水にしても、ボールを持って、ゴールを奪い切る力があればいいのだが、ロティーナサッカーに特有の「余計な一手間」によって、この試合でも攻撃が常にワンテンポ遅れる印象があった。実際には長短のカウンターで一気に攻め切った時の方が点がとれているのに、たまにこの日の試合のようにボールが持ててしまうと、逆に攻撃が停滞するのが清水だ。敵将は、そのあたりも見透かして、ハイプレスではなく、引き込み作戦を発動したのだろう。

 柏の虎の子の1点は、ワンタッチプレーが3つくらい続いた見事なものだった。清水だったら、ボールを持って迷ったり、トラップをして相手に寄せられたりしそうなところを、素早く完結し切った攻撃だった。いくらボールを持っても、ここぞという場面ではあれくらい決断およびプレーのスピードを上げないと、J1では点はとれないのだということを、見せ付けられた。

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