
ろくな情報のない昨今の清水にあって、「J1清水、下部組織強化へ指針 アカデミーヘッドオブコーチング森岡氏『潜在力さらに発揮』」という記事には、注目した方も多いであろう。
J1清水エスパルスが、下部組織全体の育成指針となる「アカデミーフィロソフィー」を新たに構築した。下部組織の指導者育成に携わる「アカデミーヘッドオブコーチング」を務める元日本代表DF森岡隆三氏(45)が中心となり作成。目指すプレースタイルを明確にした上で、選手に求める要素などスタッフが共通認識として持つ指導の観点を定め、育成年代の強化を進めていく。
ただ、それとまったく反するような、川崎についての記事が伝えられた。「川崎Fが大卒選手を積極獲得する理由。強化担当が明かす3つのポイント」というものである。
J1第23節を終えてふたりで16得点。首位を走る川崎フロンターレの大卒ルーキー、三笘薫と旗手怜央が決めたゴール数だ。三笘は筑波大学から、旗手は順天堂大学から今シーズン加入し、それぞれ即戦力として驚くべき活躍を見せている。川崎のメンバーリストに目を凝らせば、彼らだけではない。エースである小林悠も拓殖大学から、キャプテンマークを巻く谷口彰悟も筑波大学から加入している。アンカーを担う3年目の守田英正にしても、流通経済大学から加入した選手。17年前、中央大学から入った中村憲剛もそうだ。名前を挙げればキリがないほど、川崎は大学経由で加わった選手たちが主軸を務めている。そこに今日の強さであり、選手層の秘密がある気がした。
このように、人材育成・確保という観点から、かなり対照的な戦略をとりつつある両チーム。もちろん、どちらが正しいなどということはないだろう。しかし、残念ながら、現在のところ、川崎の戦略が大きく花開き、清水などは完全に圧倒された形である。
川崎についての記事の中で、いくつか注目ポイントがあるが、その一つは、川崎がJリーグ後発組だという自覚を持ち、キャッチアップするための効果的な方法として、大卒を重視しているという点である。「王国」のプライドにあぐらをかいて没落の一途を辿っている清水と、対照的だ。
もう一つ、川崎のスカウトである向島氏の次の指摘は、考えさせられる。
ユースや高校からプロになるような選手は、……当然、海外指向も持っている。大学生だから海外に行かないというわけではないですが、僕自身はフロンターレのスカウトなので、高校生をたくさん獲ってきて、海外に移籍されても困りますからね。その意味では、大学からプロになった選手のほうがチームに腰を下ろしてプレーしてくれるかなと思いました。
うーむ、確かに、清水ユースから大きな期待を受けてトップ昇格する選手は毎年いるが、成長すれば海外や(北川)、Jのビッグクラブに(犬飼)移籍してしまい、成長できなければ2~3年で引退してしまうか、下位カテゴリーに移籍するのがお決まりのパターンである。ユース出身の選手が、数年の長きにわたり清水のトップチームを支えてくれるということは、近年は稀になっている。
それにしても、清水が今回打ち出した次のような「アカデミーフィロソフィー」は、どうだろうか。
清水の特色として積極的かつ知性的にプレーし、攻守両面で仕掛けていくスタイルを打ち出した。攻撃は「意図的に優位性をつくり積極的なアクションでゴールを目指す」、守備は「個と組織で意図的かつ果敢にボールを奪いにいく」という原則も設定。体現するために必要なあらゆるプレーを一つ一つ細かく言語化した。
バルセロナのように、アカデミーからトップまで一貫した哲学を打ち立てて、カンテラ出身者がトップチームを支えるようにしたいという理想は分かる。しかし、現在のクラモフスキー体制ですら、戦術は徹底できておらず、システムも戦い方もコロコロ変わっている現実がある。「大榎ポエム」も結構だが、もっと地に足を付けて現実に向き合わないと、理想に反して、没落が加速する一方ではないか。
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