最初にお断りしておくが、所長は、左伴繁雄社長のことを、こよなく敬愛している。しかし、社長がツイッターに書き込んだ、次のようなセリフは、果たしてどうなのだろうか?

 お金だけの海外移籍は否。選手の夢の後押しが第一。でなければ選手に愛されるクラブにはならない。目先の損益に目が眩み、クラブブランドを汚すのは愚か。少なくとも私はそうしてきた。能活然り、俊輔然り、そして航也然り。航也、メディカルOK出して、先方で結果出して来い!

 これ、もしも上場企業だったら、株主代表訴訟で訴えられるレベルの発言だと思う。会社の利益よりも、一被雇用者(北川航也)の夢を大事にすると受け取られかねないから。まあ、もちろん、サッカークラブはただ単に利益を追求しているわけではなく、チーム成績や地域貢献など様々な要因があるが、そうは言ってもエスパルスも株式会社であることに変わりはなく、株主以外にもスポンサーやサポをはじめ数多いステークホルダーがいる。上掲の発言で社長は、北川の「夢」のために多少の利益は度外視したと示唆しているわけだ。これは賛否が分かれるところであり、株式会社の社長としては、相当大胆な発言であることは間違いない。

 他方で、思い出すのは、岡崎の欧州移籍の際に生じたトラブルのことだ。当時の社長は、「エスパルスは株主をはじめ多くのステークホルダーの皆様に支えられる企業体であり、岡崎選手の契約違反行為に対し経営陣として看過することは許されない」ということを、はっきりと表明していたと記憶する。当時は、浪花節よりビジネスの方が大事だという、企業経営としては当たり前の姿勢が貫かれていた。

 北川がどのような条件で移籍したのか、具体的なことは知らないので、一般論として申し上げる。Jクラブが選手本人の「夢」のために、わずかな(たとえ1億、2億入ったとしても、世界のサッカービジネスのスケールからすれば慎ましい額である)移籍金での欧州移籍を容認する。そのために、国内移籍よりも、海外移籍の移籍金を低く設定することを認める。ヨーロッパクラブは、1億~2億円といった、彼らにとってはお買い得な値段で有望日本人を獲得し、ダメだったらとっとと捨てればいいし(日本の古巣が高値で買い戻してくれることもある!)、成長したらより上のクラブに100億円で売れたりする。日本のクラブやサポが浪花節に浸っている一方で、ヨーロッパの連中は究極のノーリスク・ハイリターンビジネスを享受できるのである。

 こうした理不尽な構図については、こちらの「日本人サッカー選手の前例なき「海外移籍」ブーム、2つの理由」という記事でも改めて論じられているので、よかったらお読みいただきたい。

 そろそろ、日本サッカー協会、Jリーグも、危機感を抱いても良い頃なのではないだろうか。むろん、清水だけが海外移籍をしにくいような契約を結ぼうとしたら、それこそ有望選手が清水に来てくれなくなってしまい、社長の言うとおり、清水のブランド価値が落ちてしまう。それだったら、Jリーグ全体の共通ルールとして、国内移籍と海外移籍の移籍金に差異を設けることを禁止するとか、何だったら、逆に海外移籍の移籍金に2倍くらいの係数を設定することを義務付けるとか、そのくらいのことをしてもいいのではないか。そうでもしなければ、日本のサッカー国益は守れないと思うのだ。

よかったらクリックお願いします
にほんブログ村 サッカーブログ 清水エスパルスへ
にほんブログ村