年末から年始にかけての清水の動きを見ていて、個人的に強く感じるのは、「これはボタンの掛け違いを直す作業ではないか」ということだ。

 やはり、近年の清水の低迷の根本原因を突き詰めていくと、2010年にケンタ体制が終焉し、そこからの新たなステージへの移行のあり方に、大きな問題があったように思う。上述の「ボタンの掛け違い」というのは、そういう意味である。ケンタ時代までの清水は、J1の中でも中堅以上の存在だったし、タイトル争いの期待感は常にあった。しかし、待望のタイトル獲得はならず、予算的なこともあって、クラブはケンタ政権と決別し、どちらかというと縮小均衡の方向で、リセットを図ろうとした。その局面で、清水はクラブの伝統、チーム愛といったものを、きちんと継承できず、むしろ非常にぎゃくしゃくした形で断絶が生じてしまった。清水でやりたいと思っていた選手をクラブ側が切り、逆にクラブが主軸と位置付けていた選手たちには逃げられるという、いわゆる大脱走劇となった。2011年以降のメンバーも、J1でそれなりに戦えるメンバーだったとは思うが、組織体としてのクラブは負のスパイラルに陥り、J2降格にまで至ってしまったのだと思う。

 コバさんがJ1再昇格と、昇格初年度のJ1残留をどうにか成し遂げてくれ、清水は現在、単に戦力を整えるだけでなく、クラブとして組織面からの再構築を進めているのだと思う。言うまでもなく、その最大の一手は、久米GMの復帰である。もう一つ、見逃せないのが、すでに報道レベルでは伝えられているとおり、兵働昭弘を獲得する方向で動いているとされる点である。35歳のMFは、純粋な戦力としては微妙な面もあるが、興味深いのは「将来のフロント入りも視野に入れている」と伝えられている点であろう。イチ、純平、浩太のフロント入りと一脈通じる動きと解釈できる。キャプテンとして清水愛を口にしながら、結果的には「大脱走」に加わる形となってしまった兵働を、いわば幹部候補生として迎え入れるというのは、非常に象徴的だと思う。

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